疲れやすい・寒がり・太りやすい…それ、甲状腺のせいかも? ― 女性に多い「甲状腺機能低下症」のサインと対策をわかりやすく解説 ―
疲労感、体重増加、むくみ、寒がり…それらは甲状腺機能低下症の兆候かもしれません。橋本病を中心に、検査、診断、治療、日常生活での注意点を内科医が解説します。
目次
- 甲状腺ってどんな働きをしている?
- 甲状腺機能低下症の主な症状
- 原因の多くは「橋本病」ってなに?
- どんな検査でわかる?診断の流れ
- 治療は一生必要?薬の役割と注意点
- 日常生活で気をつけること
- 甲状腺と妊娠・女性の健康の関係
- まとめ
1. 甲状腺ってどんな働きをしている?
甲状腺は首の前側にある小さな器官で、全身の代謝を調整するホルモン(T3・T4)を分泌しています。代謝とは、食べたものをエネルギーに変えたり、体温を一定に保ったりする働きです。このホルモンの分泌が不足すると、全身の働きがスローダウンし、多様な不調を引き起こします。
2. 甲状腺機能低下症の主な症状
以下のような「なんとなく不調」が続く場合、甲状腺機能低下の可能性があります:
症状カテゴリ | 具体的な症状 |
---|---|
全身症状 | 疲れやすい、だるい、寒がり |
代謝・体重 | 体重増加、むくみ、便秘 |
外見・皮膚 | 脱毛、顔のむくみ、乾燥肌 |
精神・神経 | うつ症状、物忘れ、集中力低下 |
女性特有 | 生理不順、不妊、妊娠時リスク |
症状は緩やかに現れるため「年齢のせい」や「更年期」と誤解されやすい点に注意が必要です。
3. 原因の多くは「橋本病」ってなに?
橋本病は、自己免疫の異常によって甲状腺が少しずつ破壊され、ホルモンの分泌量が低下する病気です。日本人女性に特に多く、40〜60代に多く見られます。
- 初期には無症状のことも多く、検診で発見されるケースも
- ゆっくり進行するため、気づかれにくい
- 他の自己免疫疾患(膠原病など)と併発することもあります
4. どんな検査でわかる?診断の流れ
甲状腺ホルモンの血液検査が基本です。以下のような結果になります
検査項目 | 異常の特徴 |
---|---|
TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 上昇 |
FT3・FT4(遊離型ホルモン) | 低下 |
抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体 | 橋本病で陽性になる |
超音波検査 | 腫れ・萎縮・内部構造を確認 |
5. 治療は一生必要?薬の役割と注意点
甲状腺機能低下症の治療の基本は、ホルモンを補充する「チラーヂンS」などの薬を内服することです。
- ホルモン補充により症状は数週間〜数か月で改善します
- 血中ホルモン濃度を定期的にチェックしながら量を調整
- 自己判断での中止は禁物(症状が再発し、重症化する可能性あり)
6. 日常生活で気をつけること
- 食事:ヨウ素の過剰摂取は症状を悪化させる場合がある(昆布、わかめなど)
- 運動:疲れすぎない範囲での軽い運動(ストレッチやウォーキングなど)
- 定期通院:血液検査と医師の診察でコントロールが重要
- 睡眠とストレス管理:自律神経の乱れはホルモン分泌にも影響
7. 甲状腺と妊娠・女性の健康の関係
- 妊娠希望の女性は特に注意が必要。甲状腺ホルモンは胎児の発育に不可欠です。
- 無治療のまま妊娠すると、流産・早産・胎児の発達遅延のリスクが増加
- 妊娠中はホルモン需要が増えるため、薬の調整が必要
- 出産後に一時的な甲状腺炎(産後甲状腺炎)が起こることもあり注意が必要
8. まとめ
甲状腺機能低下症は"見えない不調"として日常に現れます。特に女性に多く、橋本病が原因のことがほとんどです。治療はシンプルで、症状の改善が期待できます。「新宿駅 内科・心療内科クリニック」では、血液検査・超音波・薬の処方までトータルに対応しています。不調を放置せず、まずはお気軽にご相談ください。