ゲーム依存の背後にある子どもの心:ADHD・抑うつ・不登校との関連と、家庭でできる対処法
ゲーム依存は単なる“遊びすぎ”ではなく、発達特性や心の不調の現れかもしれません。ADHDや抑うつ、不登校との関係を臨床視点から解説し、家庭での対応法や、医療機関に相談すべきサインについて具体的に紹介します。新宿駅 内科・心療内科クリニックでもご相談可能です。

ゲーム依存は「結果」であり「サイン」でもある
ゲーム依存(Gaming Disorder)は、ICD-11にて正式な疾患として定義されていますが、子どもたちの多くは「ゲームをやりたくてたまらない」というより、**「現実でつらいことがあり、ゲームの世界に逃げている」**という構図を持っています。
なぜゲームに依存するのか
- 現実よりも成功体験が得やすい
- 社会的なやりとりがルール化されており、対人関係の疲れが少ない
- 時間と努力に対する報酬が明確で、達成感が得られる
- 「孤独感」や「無力感」を一時的に忘れられる
こうした心理的報酬が、「やめたくてもやめられない」という依存につながります。
ADHDとの関連:特性が引き寄せる「刺激性の強い報酬」
ADHDを持つ子どもは、もともと「報酬遅延耐性」が低く、すぐにフィードバックが得られる活動を好む傾向があります。
ADHDとゲーム依存の関係性
ADHD特性 | ゲームで満たされる要素 |
---|---|
衝動性 | 即時の行動・反応が許容される |
不注意 | 刺激的で短期的な内容が多く飽きにくい |
報酬遅延への弱さ | 成功 → 報酬のサイクルが明快 |
ADHD傾向のある子は、自然とゲームに惹き寄せられやすく、過剰使用の背景に発達特性があることが多いです。
抑うつ・不安との関連:「現実逃避」の手段としてのゲーム
抑うつ傾向のある子どもは、自己肯定感の低さ、意欲の低下、無気力といった症状から、日常生活での成功体験を得づらくなっています。
抑うつとゲーム依存の悪循環
- 日常生活での不満 → ゲームで一時的解消
- ゲーム時間の増加 → 生活リズムの乱れ
- 自責感や失敗体験の蓄積 → さらに現実回避
また、ゲームをやめた後に空虚感や罪悪感を強く感じる場合は、抑うつ状態が背景にあることを疑います。
不登校との関連:因果関係は多様
ゲーム依存と不登校は相互に影響しあう複雑な関係にあります。
- 学校に行けない(心理的ストレス)→ 家にいる時間にゲームへ依存
- ゲームによる昼夜逆転・生活崩壊 → 学校への適応困難
- 学校での孤立やいじめ → ゲーム内の“仮想の居場所”へ回避
どちらが原因・結果というより、“悪循環”の中で相互に強化されていく関係といえます。
家庭でできる対応:制限ではなく「共感と観察」
ゲームを「やめさせる」のではなく、「背景を観る」
- 「なぜそんなにハマるのか」に目を向ける
- 感情的に叱るより、「どうしてそうなってるの?」と問いかける
- 無理な制限より、「本人も納得できるルール」を一緒に作る
具体的対応策
対応 | 実例 |
---|---|
安心感のあるコミュニケーション | 「困ってること、ある?」など日常的な対話の習慣づけ |
生活リズムの安定 | 起床時間・食事・睡眠の基本を丁寧に整える |
ゲーム以外の成功体験を提供 | ボードゲーム、散歩、料理、作品づくりなど、対人の成功体験を意識的に増やす |
医療機関に相談すべきタイミング:チェックリスト形式
以下のような状態が2週間以上続く場合は、心療内科などの専門機関への相談が望まれます。
✅ ゲームを止めようとすると、強い怒り・暴言・暴力が出る
✅ 昼夜逆転が慢性化し、起床が困難
✅ 学校への登校を完全に拒否している
✅ ゲーム以外の会話や興味がほとんどない
✅ 家族との関わりを避け、部屋にこもる時間が長い
専門家の視点を取り入れるタイミング
当院「新宿駅 内科・心療内科クリニック」では、こうしたゲーム依存や関連する発達・精神的背景についての診察を行っています。
「ゲームばかりで困っている」という悩みの背後には、本人も言葉にできない“心のつらさ”があることがほとんどです。
まずは否定せず、その背景を一緒に探っていくスタンスが、本人との信頼形成につながります。